「…………」
いわゆる女の子座りをした幸枝さんの前に、俺が仁王立ちで立つ。
幸枝さんは俺に命じられ、やや膝を立てるようにして、
俺の股間にちょうど顔が来るような大勢になっている。
上半身は裸で、下半身は完全に着衣状態だ。
その床にブラとカットソーが落ちている様が、背徳感をそそる。
いつも使っているトイレ…兄貴が使う場所で、上半身を裸に剥いた
兄嫁を跪かせているのも、この上ない優越を生んでいる。
「俺の部屋を出入りするところなんて見られたら怪しまれるかもしれないからね。
その点、ここなら外の様子も伺いやすい」
「……」
幸枝さんの目線が、哀しげに伏せられる。
柔らかい茶色の睫毛が、まばたきにかすかに揺れる。
毎日の家事をしているにも関わらず、さほど荒れていない柔らかそうな手は、
彼女自身の膝に添えられている。
その手は緊張か、怯えからか、かすかに震えている。
「その顔、これから何をさせられるのか、察しはついてるってことかな?」
「……つ、ついてませんっ……そんな、そんな、いやらしいこと」
そういうの墓穴っていうんだよ、幸枝さん。
「くくっ。ついてるんじゃん。でもそっか、その反応…
もしかして、兄貴にもしてあげたことはないのかな?」
「……優介さんは、こんな、変態みたいなこと……して欲しいなんて言いません」
柔らかそうな頬を硬く強張らせた幸枝さんが、頑なな調子で答える。
「クンニもしない、フェラもしない、どうせ毎回そこそこの愛撫のあとに正常位で挿入して申し訳程度にヘコヘコってバッタみたいに腰振って……それで終わり、なんでしょ? そんなセックスしてるようじゃ全然だめだよ幸枝さん」
「…優介さんは………………優しいです」
幸枝さんが頬を強張らせたまま、答える。
「ふぅん?」
『優しい』ってことが、セックスにおいてなんの美徳にも長所にもならないってこと、
幸枝さん自身の体が一番理解してるだろうに。
まあ、いいやちょっと揺さぶってやろう。
「……ああ、そうかあ」
たった今、重大なことに気づいたように、わざとらしく声をあげる。
「この調子じゃセックスレスの原因は、幸枝さんにあるかもしれないなあ」
「……え……っ」
幸枝さんが、一瞬、何を言われたのかわからないって顔をして瞬いた。
いいねえ、いいねえ、まったく思いもよらなかったっていう顔、
いやぁ好きだなぁ……くくっ!
「男はね、どんな紳士ヅラしてても、エロいことが大好きなの。なのに肝心の妻がそんなことじゃなあ……そりゃマンネリにもなって、セックスもしなくなるよ」
「……だ、だって……そんな、こんなことっ……したいなんて言われたこと……っ」
「だって幸枝さん、今の調子で『そんな変態なこと!』なーんて言いそうだもんな」
「…っ!!」
幸枝さんが目に見えて動揺する。
みるみるうちに、罪悪感が幸枝さんの顔を覆っていく。
柔らかいのは体だけじゃないねえ、幸枝さん。
心も柔らかくて、優しくて、つっつくとすぐにグラグラと揺れていく。
「兄貴もそりゃ自分から言い出さないよ。ああー……でもそっかあ、兄貴には同情しちゃうなあ。幸枝さんがセックスに対して潔癖なところを見せているから、兄貴も遠慮して、その結果が今の状態なんじゃないの?
セックスレスの原因は、幸枝さんにこそあるのだと──ねちねち責めていく。
幸枝さんは何も言わずに、悲しそうな顔で俺の言い分を聞く。
その手がきゅっとアイロンの利いたスカートを握りしめる。
よしよし、良い感じだ。
「そうだなあ…じゃあこうしよう」
いいアイデアを思いついた、とばかりに、幸枝さんに語りかける。
「俺だけ気持ちよくしてもらうのも悪いからね。今日はそんな幸枝さんに、
男の喜ばせ方を丁寧に教えてあげようね」
そう言って、スマホを構えると、幸枝さんが慌てて声をかける。
「お、お願いです……言うことは聞きますから、撮るのはやめてくださいっ、涼人さん」
「大丈夫大丈夫。誰にも見せないからさ。ほら、あとで反省点をレクチャーするのに必要だから」
「で、でもっ…っ………」
「まあまあ」
まだ何か言いたそうな幸枝さんを適当に流して、
俺は、ジーンズとボクサーブリーフを下ろしていく。
「……っっ……ぁぁ……っ!」
血管をみなぎらせて反り返った怒張があらわになる。
それを目と鼻の先に突きつけられると、勢いよく勃起した男根の、
そのあまりの逞しさに、幸枝さんは息を呑み、言葉を詰まらせてしまう。
「………っく」
むわりと雄の臭いが漂う竿に、幸枝さんが完全に目を奪われる。
「………ごくっ――んっ…」
先ほどまでは恨み言を言っていた口が真一文字に閉じられて、
幸枝さんの白い喉がごくりと鳴る。
「つーわけで」
そんな幸枝さんをニヤニヤ見下ろしながら──
「今日はフェラチオの実習をしようね、幸枝さん」
──俺は、フェラチオ実習の開始を宣言する。